あなたは恋愛や友人関係、家庭での問題以上に「働くこと」に悩んでいませんか?
僕は仕事柄、ブラック企業のパワハラ相談を受けることが多いのですが、このような話をよく耳にします。
「長時間労働でうつ病になったのに、いきなり辞めさせられた」
「辞めちまえ!と罵声を浴びせられて辛い」
このような相談を受けて強く感じるのは、今の20代の若い世代は「すぐに諦めちゃう」ということ。それほどまでに、絶望感が広がっていて、「ブラックな会社に対して交渉なんてできない」という諦めの気持ちが半端ありません。
今回は、そんなブラック企業に勤める人や、パワハラを受けて悩んでいる人向けに、パワハラの実例をご紹介しながら「これってパワハラなの?」という目線で、その基準と対策法をお話してていこうと思います。
目次
そもそもブラック企業とは何なの?
そもそもブラック企業とは、異常な長時間労働やパワハラなど、劣悪な労働条件で社員を酷使し、離職率がたかく、過労にともなう問題も起きやすい企業のことです。
もともとはネットで誕生した俗語ですが、流行語大賞で紹介されるほどこういった企業は、世の中に蔓延しています。2008年末に「派遣切り」が社会問題化し、2013年には「ブラック企業」が、ユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに選ばれました。
この現象が意味するのは、残念ながら社会が悪化の方向に動いているということです。
ブラック企業の特徴は、1人1人ケースは違いますが、共通していえることが一つあります。それは社員が自分の生活と権利を守るための「労働法」を知らないことを利用して、企業の都合のいいように働く社員を扱っていることです。
ブラック企業が悪なのは疑いようもない事実ですが、そこで働く人間も自分の身は自分で守るために、労働法に代表される方というものを学んでいく必要があります。
ブラック企業のパワハラ実例6選
それではここからは、今まで実際にあったブラック企業のパワハラ事例をもとに、その解決策を示していきます。
読み進めていくうちに、ブラックな話題ばかりに気分が悪くなるかもしれませんが、僕たちは働いて生きていかなければいけません。
そのときに「知識」はあなたを守る大きな「武器」になります。
ペンを投げられて恫喝される
まずは1つ目のパワハラ実例です。
僕が大学を卒業し、新卒で入社した会社は一言でいえば体育会系の会社です。営業成績が悪いと、容赦なく罵声が飛んできます。
「稼いでないやつは、会社にいる意味がないんだよ」
「数字足りてないのわかってんの?」
など精神的にくる言葉の連続です。
罵声だけで済めばいいのですが、残念ながらそれだけではありません。
物理的な暴力的行為も横行しています。上司から、ペンを投げつけられる、頭を軽くはたかれる、電話を投げられる、といったことがよくあります。
同僚に対しても行われていますし、僕もされたことがあります。こんな会社はおかしい、ブラック企業ではないのかと思うのですが、社長や上司は、
「お前らがなっていないから、オレたちが教育してやってんだ!」
「指導の一環なんだからありがたく思え!」
と、いつも恫喝してきます。
これは指導だから、我慢しないといけないのでしょうか?学校の先生による暴力が問題になっていますが、会社での暴力もいけないことですよね?
このケースのパワハラ基準とその対策
どんな理由でも暴力はパワハラになります。
法律には、これが「いじめ」、これが「パワハラ」といった定義は存在しません。しかし、法律解釈学においては、いじめやパワハラは「人格権」という法益を侵害するから許されないと考えられています。
労働契約法は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができうよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。
この規定は、労働者の生命、身体のほか、人格権を守る必要があることを宣言し、いじめやパワハラが許されないことを定めるものといえます。
暴力的行為は、それ自体、暴行罪、傷害罪に該当する行為であり、犯罪です。人の身体を傷つけるものである以上、当然に許されるものではありません。
身体を傷つける行為は、同時に人格をも傷つけるものになります。暴力行為は、労働契約法からしても認められることもありません。
社長や上司が言う「指導のため」という言葉は、パワハラを行うブラック企業がよく使う常套文句であり、勝手な正当化です。
指導のためであれば働く社員を傷つけてもよい、傷つけないとわからない、なんていうことは当然ありえないことです。
当然このような、ペンを投げつけられる、頭を軽くはたかれる、電話を投げられる、といった方位はパワハラであると言えます。
対策として、上司の暴力的なパワハラ行為に対しては、毅然と「やめてください」と主張すべきです。こうした行為はエスカレートしやすいので、ペンを投げつけられるくらい、頭をはたかれるくらい、と思って我慢していると、結果的に取り返しのつかない暴力的行為を受けることがあります。
それでも暴力的行為をやめてくれないときは、警察に被害を申告するべき内容です。また、そのように暴力をふるうことが当然のように許容されるブラック企業は、結局のところ取引先もお客さんも大事にはしません。
そんな会社には未来はありませんから、早めに転職するのが一番です。
パワハラを受けた場合は、その証拠を集めておくのも重要です。恫喝された言葉は、その日時と言葉をメモっておき、もし身体に傷が残るような暴力を受けたときには、早めに医師に診察を受け、治療とともに、身体的被害の状況を把握してもらいましょう。
度を超えたイジリを受けている
2つ目のパワハラ実例です。
うちの会社では、学校でいう「いじめ」を受けている社員がいます。職場の人たちが、その人にだけ次のようなことをしているのです。
- 資料が配布されない、配布されても投げつけられる
- その人に対してだけ挨拶を返さない
- 話しかけられても無視する
その社員からはとくに異議申し出もないようですし、いいのかなとは思うのですが、これってどうなんでしょうか。
また「イジリ」といえる場面も見たことがあります。これは、イジられている人も「なんなんですか~」と笑いながら返しているので、とくに問題はないと思っているのですが、それでいいんですかね?
今のところ大きなトラブルは起きてはいませんが・・。
このケースのパワハラ基準とその対策
「パワハラ」の社会問題化を受けて、厚生労働省は2012年に、この問題に関する報告書をまとめています。それによると、パワハラこのように定義されています。
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」
そして、それに該当する典型的な6個の類型として、次をまとめています。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過少な要求
- 個の侵害
今回のこのケースは、③の人間関係の切り離し、に該当すると考えられます。
パワハラ問題を考えるときに、「イジリ」であるとか、「いじめ」であるかといった分類で考えるのはやめることです。
法律的に意味があるのは、その同僚の行為が「精神的・肉体的苦痛を与えていないか」「その人にとって働きにくい、職場環境の悪化を招いていないか」です。
また、イジられている人、いじめに遭っている人が、そのことに異議を唱えていないかどうかも、関係ありません。
法律的に問題があると考えられるときは、ただちに中止するようにしてください。同僚に声をかける、会社に是正を求めるといった対応が必要です。
企業には労働者の心身の健康を保全するため職場環境を整備する義務があります。具体的にはハラスメントに対する考え方や、その周知、発生した場合の対策などについて整備することが事業主には求められています。
会社に、この義務の履行として、是正措置をとるように求めてください。
「最近太ったんじゃないの?」と言われた
3つ目の実例です。
会社で営業成績が伸びず、苦しんでいます。そのストレスで、帰りが遅くなってしまったあと、よくやけ食い的に食べてしまい、またお酒の量も以前と比べて増え増した。
そのせいか、最近少し太ってきているのが、目に見えてわかります。
先日、上司からまじまじと見られて、「お前、太ったなぁ!」と言われました。
実際太ったので、「ええ、少し。ダイエットしなきゃと思っています」と返事したのですが、それから上司は何かにつけて「こいつまた太りやがってさー!」などと、毎日何回も、私が太ることに関して話題にします。
正直だんだん不愉快になってきているのですが、この程度のことではパワハラとはいえないのでしょうか。イジリとして耐えないといけないのでしょうか?
このケースのパワハラ基準とその対策
基本セーフな案件ですが、精神的苦痛がひどい場合はパワハラとして認定されるケースもあります。
パワハラは、労働者の人格権の侵害をするから許されないと考えられています。
精神的苦痛を受ける言動をされ、働きにくい、職場環境が悪いと考えられるような状況になれば、それは労働者の人格権を侵害するものとして違法視されます。
「太ったなー!」という発言は、相手を心配して発言されるときもあれば、からかいやばかにするニュアンスで発言されるときもあるでしょう。
したがってそれ単体でパワハラと断定はできません。
また、仮に悪意あるニュアンスで発言されても、この言葉自体が持つ常識的な受け止め方からして、ただちに人格を侵害するとまではいえないように考えられます。
ただし、悪意あるニュアンスで、繰り返され、言われる側のストレスが増加していくことによってパワハラと認定させる可能性はでてきます。
対策としては、上司に対して、「そろそろそれはやめてもらえませんか」と話してみるといいでしょう。上司に直接言えない場合は、その上司を監督する立場にある人に話をするのもありです。
毎日呼び出され、叱責される
4つ目の実例です。
私の会社では、毎朝朝礼があるのですが、その場で前日の営業成績が不振であったものが上司からつるし上げられます。
「遊びにきてんのか?」
「トイレに行く暇があったら仕事しろ」
このような言葉がフロア全体に響き渡ります。
また、日中に上司が当日の成績が芳しくないことに気がついたとき、席まで呼びだして、そこでも叱責を受けます。
叱責の内容が、営業成績に関することなので、仕事上の注意と思って我慢しているのですが、叱責が30分、1時間になることもあり、また毎日のことなので、正直もう会社には行きたくない気持ちでいっぱいです。
仕事上の叱責でもパワハラになることがあると聞いたことがあるのですが、どこまでならパワハラではなくて、どのラインを超えるとパワハラになるのでしょう?
はじめのうちは仕事だと思って我慢していたのですが、もう辛くて仕方ありません。
このケースのパワハラ基準とその対策
パワハラは、人格権侵害をもたらすため許されません。したがって、上司の叱責の言動が激しいが、指導の範疇といえるものか、行き過ぎたパワハラかについても、人格権の侵害といえるか否かで判断します。
問題は、それをどう判断するかです。
この点については、三井住友海上事件という裁判例があります。保険会社のサービスセンターにおいて、上司が、部下の業績に対して、次のような内容のメールを当人を含む関係者10数名に送っていたものです。
「意欲がないなら会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても損失です。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。(中略)これ以上当SCに迷惑をかけないでください」
東京地裁はこれについて、退職の働きかけやほのめかしではなく一時的な叱責と理解できる、叱責としては強度だがただちに業務指導の範囲を超えているとはいえない、と判断しました。
しかし、東京高裁はこの逆です。
「退職勧告とも会社に不必要な人間ともとれる表現、人の気持ちをいたずらに逆なでする侮辱的な行為で、不法行為を構成する」
このようにこの行為は、パワハラに該当すると認定したのです。
このように何が人格権侵害にあたりパワハラに認定されるかは、ケースごとに判断が分かれるものです。一般的に問題となる言動の内容を中心に、いくつかの周辺事情を含め総合的に判断されます。
対策としては、その言動が耐え難いものになったときは、やめてくださいとか、もう少し言い方を考えてくれませんか、と申し出ることは行うべきです。
ただし、こうした物言いをする上司に、これは逆効果の場合が多いと思います。
上司の指導的立場にある者への申告、コンプライアンス委員会などの機関への申告といった対応を、同僚同士で話し合い、集団で行うのが良いでしょう。
ただ、こうしたケースは、言動の問題であるだけに、言った言わないと問題となってしまうことが多いです。いつ、どのような場面で、具体的に何を言われたのかを、明確に残しておくことが重要になってきます。
急に「君は仕事ができない」と言われ他の仕事をすることになった
5つ目の実例です。
私は、これまで会社にある程度評価されてきました。自分でも会社の業績に貢献している自覚がありましたし、上司もそのように評価してくれていました。
ところが先月になって、上司から急に呼び出され、別の仕事をするように命じられました。理由を尋ねると「だって、君は仕事ができていないじゃないか」と言われました。
それは事実と違うと抗議しても、上司はまったく聞き入れてくれず、会社の決定だから従うようにと繰り返すばかりです。
そして、新しく与えられた仕事は、コピーとりや資料を集めて編集したりするだけの仕事。これは、よく会社に入ったばかりの新人が、研修の一環として行うものです。
私のように10年もキャリアを積んだ人間にこのような仕事をさせるとは、会社はいったいどういうつもりなのでしょうか。
こんな仕事ばかりをさせられるのなら、もう会社には行きたくありません。
このケースのパワハラ基準とその対策
キャリアにふさわしくない仕事の配置はパワハラに該当します。
日本の職場では、通常、正社員として労働契約を結んでいる場合、職務の内容な勤務場所などについて、使用者に大きな裁量権が認められているのは通常です。
労働契約がこのような内容で締結されているのであれば、使用者の義務命令には、それ自体公序に反するものでない限り、労働者は従う義務があります。
ただし、業務指示が、業務上の必要性を欠いていたり、労働者の被る不利益が著しく大きい場合、権限を濫用したものとして無効になる場合があります。
また、積んできたキャリアに比べてふさわしくない仕事を与えることがパワハラ行為だと認定された裁判例もあります。
バンク・オブ・イリノイ事件で裁判所は、勤続33年の管理職だった労働者が、総務課の受付に配置転換された件について2つのことを指摘しました。
まず、それまで20代前半の女性の契約社員が担当していた業務だということ。そして旧知の外部者の訪問も少ない職場だということ。
このことから、労働者にとって「ふさわしい職務であるとは到底いえない」と判断しています。
不当な人事配置に黙って従う必要はありません。命じられた業務には従事しながら、毅然と抗議し、撤回を求めましょう。会社との間で話し合ったりするためには、次のようなたくさんの事実を集める必要があると言われています。
- 会社が自分にその仕事を命じる具体的必要性に乏しいと考えられること
- 自らが受ける不利益の大きさ
- 担当してきた業務の内容と実績
- 会社の評価
- 現在行っている業務の内容
- 通常その業務は会社においてどんな人が担当する仕事なのか
会社がこのような措置を命じることにはなんらかの背景事実があるはずです。そうした背景事実に関する事実も集められるなら集めておくとよいと考えます。
口癖が「辞めちまえ」の上司がしんどい
最後に6つ目の実例です。
私の会社では、課長職にある上司が、何かというとするに「辞めちまえ!」と言います。
失敗したことであればもちろん、上司の気に食わない状況になれば、
「こんなこともできないのか。向いてないんじゃない?」
「給料泥棒。お前なんか辞めてしまえ」
と大声で怒鳴ります。
先日、我慢できなくなったので、同僚数名とともに部長に嘆願書を出して、是正を求めました。その後私たちが呼び出されて、部長から、このようなことを言われました。
「君たちの話があって、課長からも直接事情を聴いた。彼は、キミたちに辞めろと言ったことは認めているが、それはあくまで君達を発奮させるために言っただけで、本意ではないということだった。誤解を招く発言は私から注意しておいたから、キミたちもわかってくれ」
引き下がらざるを得ませんでしたが、どうしても納得がいきません。もうこんな会社辞めてしまおうかと悩んでいます。
このケースのパワハラ基準とその対策
退職を強要する発言はパワハラに該当します。
労働契約において、期間の定めのない場合、期間が定められていてもその期間中は、労働者には辞めさせられない権利があります。
この点から考えても、その場を管理する管理職は、簡単に「辞めろ」と発言すべきではありません。こうした「辞めろ」という発言を含む退職強要で、発奮を促すためであったという上司の言い訳はよく耳にします。
しかし、そもそも「辞めろ」と言えば、辞めたくないので発奮して成果を上げるという発想を本当に上司が持っていたかが疑問です。
こうしたケースでは上司は、多くの場合、感情に任せて発言していて、「伝家の宝刀」であるはずのこの言葉を何度も口にしているからです。
もし上司にその認識があるとしても、まずその認識自体、「風が吹けば桶屋が儲かる」式の合理性のない発想である場合が多く、その発言を受ける対象となる労働者の性格や業績を考えての発言であったという場合以外では、合理性を持たないでしょう。
とはいえ、世間ではこうした「辞めちまえ」発言が多数発生していて、それゆえに、考えなしに行われたというだけでは、それをもって裁判所がパワハラだと判断することは少ないのが実際のところです。
その意味では、この行為をパワハラと認定するためには、継続的かつ反復的に行われていたことを実証する必要があります。
パワハラ対策として、「辞めちまえ」発言はもちろんのこと、上司の日頃の侮辱的言動についてはすべて記録して残しておきましょう。
パワハラ上司の特徴とその具体的な対策法
「こんなに仕事ができないでどうすんの?」
「おまえ仕事舐めてるの?」
「この給料泥棒がっ!」
ここまでご紹介してきたパワハラの実例のように、あなたの心をどんどん痛めつけてパワハラ上司にはどんな対策を講じればいいのでしょうか。
いつも機嫌が悪いから言いたいことを少しも言えない。
明らかに自分が無能なのに「責任を取れ!」と恫喝してくる。
こんなパワハラ上司を相手にしないといけないなんて、仕事に行きたくない、辞めたいと思っても当然です。
ここではは、パワハラ上司の特徴や心理を解説しながら、そのパワハラからあなたの心を守るもっと具体的な対策をお話していきます。
詳しくはこちらから>>パワハラ上司対処法。その特徴と心理を知ればあなたの心はきっと軽くなる!
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